不動産オーナーや大家さんにも必要となる遺品整理の知識

遺品整理が不動産管理に直結する理由
賃貸物件で入居者が亡くなった場合、遺品整理は単なる後片付けでは終わらない。不動産オーナーや大家にとっては、「原状回復」「次の募集」「近隣対応」と同時に、法的・感情的なトラブルを避ける判断が必要になる。
遺品整理専門会社は、残された物を処分するだけの業者ではない。遺族が引き取るべき物、供養が必要な物、金銭的価値のある物、処分可能な物を整理しながら進める役割を担う。
この工程を理解せずに「残置物撤去」として一括処理してしまうと、後から相続人や関係者との問題に発展する可能性が高い。
特に賃貸物件では、オーナーや管理会社が現場判断を誤ると、「勝手に処分された」「必要な物がなくなった」という形で後から責任を問われる立場になりやすい。
そのため、遺品整理を業者任せにせず、判断の仕組みを把握しておくことが、不動産管理のリスク回避につながる。
仕分けの順序を知らないと起きる管理トラブル
遺品整理は、不要な物を捨てる作業から始めてはいけない。最初に行うのは、形見分けとして遺族が必要とする物の確保である。その後に、供養が必要な物、買取できる物、処分する物、再利用できる物へと段階的に仕分けしていく。
この順序を知らずに整理を進めると、不動産オーナーや大家が「処分していい」と判断した物の中に、相続人が引き取る予定だった物や重要書類が含まれているケースが発生する。
現場では、タンスや家具の裏、床下、収納の奥から現金や証書が見つかることも珍しくない。
遺品整理はまず仕分けを行う
遺品整理専門会社では、仕分け中に見つかった物をその場で確認し、独断で処理しない体制を取っている。
この考え方を理解していないと、管理側が「片付けを急いだ結果、後から問題が起きる」という状況に陥りやすくなる。
買取についても同様である。貴金属や宝石だけでなく、大型家具や比較的新しい家電が買取対象になることがある。買取金額は作業費用から差し引かれるため、処分費の一部を相殺できる場合もある。
オーナーにとっては、処分コストだけを見るのではなく、全体の精算構造を理解することが重要になる。
ご遺骨や仏壇を誤って扱うリスク
賃貸物件では、入居者が亡くなった後にご遺骨や仏壇が残されることがある。ここは、不動産オーナーや大家が最も判断を誤りやすい部分である。
身内がいる場合、ご遺骨は相続人が引き取るのが原則であり、管理側が処分する権限はない。身内がいない、連絡が取れない場合でも、勝手に処理することはできない。
判断の軸となるのが火葬証明書であり、これがあれば誰のご遺骨かを証明でき、供養や納骨を引き受ける寺院につなぐことができる。
供養や遺骨の扱いなど業務範囲外の作業も出てくる
供養の方法は、墓への納骨だけでなく、樹木葬、海洋散骨、手元供養など多様化している。ただし、散骨などは専門性が高く、不動産管理の範囲で対応できるものではない。専門会社に委ねる必要がある。
仏壇についても、魂抜き(閉眼供養)を行わずに処分すると、感情的なトラブルに発展しやすい。供養を終えた後に初めて、仏壇は家具として扱える。
オーナーや大家がこの流れを知らないまま判断すると、「管理側の対応が不適切だった」と指摘される原因になる。
見積もり内容を理解しないと責任が残る
遺品整理の料金は、部屋の広さだけで決まらない。間取り、荷物量、階数、エレベーターの有無、処分量によって大きく変わる。20〜30平方メートル程度の部屋での金額帯はあくまで目安であり、現地確認なしに判断できない。
見積もりの中で大きな割合を占めるのは、仕分け後に発生するゴミの処分費である。見積書が作業費・人件費・処分費などに分かれていれば、オーナーや管理会社も内容を把握しやすく、相続人や関係者への説明がしやすくなる。
一方で、口頭のみで金額を提示し、書面を出さない業者も存在する。この場合、後から追加費用を請求されても、管理側が反論しにくい。
見積もりの内訳を理解することは、費用管理だけでなく、説明責任を果たすための知識でもある。
業者選定を誤ると物件側が巻き込まれる
遺品整理は金品を扱うため、トラブルが起きやすい分野である。実際に問題となるのは、金品の持ち出し、不法投棄、依頼内容と異なる作業の実施である。
これらが発覚した場合、作業を依頼した側、つまり管理会社やオーナーが責任を問われる可能性がある。
業者を選ぶ際は、最低限次の点を確認する必要がある。
・ホームページが存在するか
・住所を地図で検索して実在しているか
・代表者名を検索して情報が確認できるか
特に前払いを強く求められる場合は注意が必要である。作業完了後に室内を確認し、問題がないことを確認したうえで支払う流れを取ることで、管理側のリスクを下げられる。
特殊清掃と生前整理を知っておく意味
遺品整理には必須の国家資格はないが、廃棄物を扱う以上、一般廃棄物収集運搬に関する市町村の許可が関係する。許可を持たない業者が処分を行うと、結果的に物件側にも影響が及ぶ可能性がある。
特殊清掃は、孤独死などで体液が床や建材に付着した場合に必要となる。汚染の程度や床材の種類によって作業内容は変わり、軽度であれば大掛かりな工事を要しない場合もある。一方で、巾木の上まで汚染が及ぶと解体や交換が必要になる。工程によっては数日から1週間程度かかる。
生前整理も依頼件数は増加している
生前整理は、亡くなった後ではなく、介護施設への入居や住み替え時に行われる整理である。賃貸物件では、高齢入居者の退去時に生前整理が行われるケースが増えている。
生活保護の場合、市区町村が処分費を負担する制度が使われることもあり、その際も複数社から見積もりを取る運用が行われている。
料金の安さだけで業者を選ぶと、処分経路や許可の扱いが不透明になることがある。
どのような流れで整理・処分が行われるのかを理解しておくこと自体が、不動産オーナーや大家にとってのリスク管理になる。