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てんかん症状と対策【備えと生前整理の重要性】

目次

「てんかん」とは? ― 脳の電気信号の異常による慢性的な病気

てんかんは、脳の神経細胞が突発的に異常な電気的活動を起こし、それが繰り返される病気です。

発作の内容はさまざまで、けいれんを伴う激しい発作から、ぼーっとするような一見目立たないものまで多岐にわたります。発作は突然起こるため、本人や周囲にとって大きな不安要素となります。

この病気は子どもから高齢者まで幅広い年齢層に見られますが、特に高齢者では発症の原因が明確であることが多く、注意が必要です。

高齢者のてんかんは、脳卒中、頭部外傷、認知症、脳腫瘍などの後遺症や併存症が関与していることが少なくありません。加齢に伴って脳の構造や機能に変化が起こることで、てんかんの発症リスクも上昇するとされています。

この記事では、高齢者のてんかんに焦点をあて、その特徴や早期発見のポイント、対処法、生前整理まで詳しくお伝えします。

高齢者に多いてんかんとは? ― 症状が目立ちにくい理由

「部分てんかん」とは

高齢者のてんかんで多く見られるのが「部分てんかん(局在関連てんかん)」で、中でも「複雑部分発作(焦点意識減損発作)」が中心です。これは、脳の一部で発生した異常な電気信号が意識の低下を伴う症状として現れるタイプです。

見逃されやすい症状の例

  • 反応が鈍くなる、無表情になる
  • フラフラと歩き出す
  • 同じ言葉や動作を繰り返す
  • 口をモグモグ動かす
  • 発作後の記憶が抜け落ちる

これらの症状は一見てんかんとは結びつきにくく、認知症やうつ病と誤診されやすい点に注意が必要です。

発見のカギ ― 観察と記録で見えてくる兆候

普段との違いを「見逃さない」

家族や介護者が「反応が遅い」「話がちぐはぐ」など「いつもと違う」と感じる瞬間は、てんかん発作の前兆や発作後の影響かもしれません。普段の体調不良や疲労との違いを見極めるには、意識や反応の変化、手足の違和感、異常な動き、五感や感情の異常など、繰り返し現れる特徴的なサインに注目することが大切です。

睡眠不足やストレス、強い光や音など発作の誘因もチェックしておき、症状や状況を記録・録画しておくと、診断や治療に役立ちます。冷静に観察し、繰り返す場合や意識が戻らない場合は、早めに医療機関に相談しましょう。

患者の観察を助けるツール

  • チェックシートの活用:「急に無反応になる」「記憶が飛ぶ」などを記録できるシートは、医師との情報共有に有効です。チェックシートは、医療機関や自治体の介護福祉窓口、てんかん支援団体のホームページなどで入手できることが多いです。
  • 動画記録の活用:冷静に発作中の様子をスマホで撮影し、医師に見せることで診断の助けになります。

診断の流れと使用される検査

医療機関で行う主な検査

  • 脳波検査(EEG):発作中の脳波を記録します。ただし、通常の検査で異常が出ないこともあるため、長時間記録や睡眠時検査が重要です。
  • MRI・CT検査:脳の構造的な異常(腫瘍、萎縮、出血など)を調べます。

専門医の診察が重要

一般の医師では見逃される可能性もあるため、神経内科やてんかん専門医による診断が推奨されます。

てんかんの進行とは? ― 発作の変化に注目

病気の進行を疑うサイン

  • 発作の頻度が増えてきた
  • 発作後のもうろう状態が長くなっている
  • 日常生活に影響(転倒、物忘れ、動作の低下)

継続的な医師の観察が重要

服薬状況や副作用、発作の変化などを医師と家族で記録・共有することが、てんかんの進行を把握する鍵になります。

突然死のリスク ― SUDEP(予期せぬ突然死)とは?

SUDEPとは

てんかんの発作中や直後に突然死することがあり、これをSUDEP(Sudden Unexpected Death in Epilepsy)と呼びます。

高リスクになる条件

  • 夜間発作が多い
  • 強直間代発作(全身けいれん)
  • 発作がコントロールされていない
  • 薬の飲み忘れ

高齢者では強直間代発作は少ない傾向にあるものの、慢性的な発作が続く場合は十分な注意が必要です。

家族ができる日常の対策と予防

  • 発作記録と動画を残す
  • 夜間の見守り(センサーやアラームの活用)
  • 薬の飲み忘れを防ぐ管理方法
  • 異変を感じたら迷わず病院へ

生前整理で“もしも”に備える

生前整理の具体的な内容

生前整理とは、自分の死後を見据え、残される家族が困らないように準備をしておくことです。医療情報の整理だけでなく、以下のような多方面の準備が含まれます:

  • 医療情報(服薬リスト、主治医、発作歴)の整理
  • 緊急連絡先の明示
  • 発作動画やチェックシートの保管
  • 希望する治療や延命措置についての意思表示
  • 遺言の作成
  • 自宅や遺品の整理と分配の方針
  • 財産の相続方法や売却の準備

これらの情報を前もってまとめておくことが、家族や医療者にとって大きな助けとなります。

生前整理のメリット

生前整理は、万が一の際に遺族が「何をどうすればよいのか」と悩む時間を減らし、冷静な対応を可能にします。また、本人が望む医療や介護の方針を明確に伝えておくことで、意思を尊重した支援が受けられる点も大きな利点です。さらに、遺言や財産の整理を通じて、相続トラブルの防止や手続きの円滑化にもつながります。これは“最期の準備”ではなく、“今を安心して生きるための支度”とも言えるでしょう。

今できる準備 ― 安心を支える行動の積み重ね

高齢者のてんかんは、早期発見と日常の観察・記録が何より大切です。そして、もしもの事態に備えて、家族で日頃から話し合い、必要な情報をまとめておくことが、安心感につながります。

てんかんは適切な治療と支援があれば、生活の質を保ちながら付き合っていける病気です。生前整理を通じて、「生きる準備」を進めることも、家族と自分を守る大切な一歩です。できることから一つずつ取り組むことで、不安のない安心した毎日を築くことができます。

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